1-3.何もしていないのに壊れた/動かなくなったの真実と嘘

PC全般

こんにちは。プログラマー・ITエンジニア・宅録エンジニア・ギタリストの小林薫です。

今回は、パソコン苦手勢の伝家の宝刀「何もしていないのに壊れた」について、僕の考えをお話ししようと思います。

まず、論理的に考えれば当然のことですが、「何もしていないのに壊れた」はあり得ません。
パソコンが意志を持って自壊するプログラムを組むことは(まだ)不可能ですし、外部からのウイルスにより壊れたとしてもそのウイルスを招き入れたのは自分の操作によるものです。そもそもパソコンを起動していなければ自壊プログラムも組まれないしウイルスも侵入してきません。電源を入れた時点で、すべての責任は自分にあるのです。

ではなぜ彼ら/彼女らは口をそろえて同じことを言うのでしょうか。それは、「何もしていない」のではなく、自分の実行した操作が、どのような意味を持っていて、どのような結果になるのかを知らないために、自分の行った操作について意識できず、結果、何もやっていないと頭で認識してしまうのです。

なぜそう言い切れるかというと、僕も「何もしていないのに!」側で言い張った経験があるからです。

何をしたかというと、依頼でとあるエクセルファイルを更新したときに、更新対象ではないシートのデータが消えているが、何か知らないか(=お前が消したのではないか)と指摘がありました。ただ僕はそのシートは触っていなかったので、そのシートについては何もしていませんと答えました。
これは事実です。間違いなく僕はデータが消えたシートは触っていませんでした。
ただ、実はエクセルには、対象シートをアクティブにしていなくてもデータが削除できてしまう仕様があるのです。

わかりやすいように短い動画を作成したのでご覧ください。

おわかりいただけたでしょうか。
基本的にエクセルはシートごとに独立しており、シート間で操作は連動しないのですが、複数シートを同時に選択することで、全シートで操作が連動するのです。
つまり、在りし日の僕は、おそらく更新したいシートとデータが消えてしまったシートを同時に選択しており、更新対象シートで値を削除したところ、その操作がもう一方のシートにも反映され、データを消してしまったのです!今となっては証明する術はありませんが、状況証拠的に間違いないでしょう。

複数シートを選択すると動作が連動するというエクセルの仕様を知らなかったがために、何もやっていないのに疑われることに憤慨しながら、自分の偽りの潔白を主張し続けたのです。

のちにエクセルのこの仕様を知り、「あの時の犯人は俺か!!」と気づいた時の衝撃は今でも忘れられません。

この例からもわかるように、人間は自分の知らないことを自分の制御範囲として認識できないのです。ゆえに、操作の意味を知らない人たちはいつまでも「何もしていないのに壊れた!」を叫び続けるのです。
言い換えれば、その人の認識の中で「何もしていない」は真実ですが、その事象を外から観測する有識者からすると「何もしていない」は嘘、ということになります。

この状態から脱却するために、何か問題が起こったときに、まずは「きっと自分が何かしたせいだ。どれがいけなかったんだろう?」と自分自身を疑う姿勢を身に付けるようにしましょう。そうすることで、問題解決のスピードが飛躍的に早くなることは間違いありません。

知らないということは非常に怖いことです。DAWでもオーディオデータが破損し二度と復元できなくなる操作があります。もしその操作をレコーディングした素材に対して納品前日にやってしまい、録り直しの時間はない、そんな状況になったら…想像するだけで恐ろしいですね。

古代ギリシアの哲学者ソクラテスも言うように、まずは自分は無知であるということを自覚することが大切です。自覚することで謙虚になり、慎重になれるからです。確認のポップアップが出たらとりあえずOKを押すのではなく、これは押して大丈夫なやつかな、と一考し、確信をもってOKを押すことができるようになりましょう。

今回は「何もしていないのに壊れた」を題材に、無自覚の操作によるエラーの発生原因とそれに対する姿勢についてお話ししました。まとめると、

POINT・何もしていないのに壊れたはありえない
・自分を疑う姿勢を身に付けよう

です。この記事が皆さんの参考になれば幸いです。

次回は「なぜかすぐにCubaseが落ちる人(タスクマネージャ)」を予定しています。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。

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